血縁によらない親子が〝親子になる“ために必要なこと-「真実告知」
2023年11月7日、第三者の精子、卵子を使った不妊治療のルールなどを定めて「生殖補助医療法案」の成立をめざす超党派の議員連盟は、生まれてきた子どもの「出自を知る権利」について一部認める考えを示しました。子どもが成人になったときに希望すれば提供者の意思にかかわらず、独立行政法人を介して身長、血液型、提供時の年齢を開示するというもので、一歩前進したようですがまだまだ検討の余地のあるものでした。その前提として、「出自を知る権利」を保障するためには、子どもの成長する過程において、子ども誕生には第三者の提供者の存在があったという事実(「真実告知」)を踏まえて、大切な家族であることを伝えることは健康な家族関係と子どもの継続したアイデンティティを積み上げるために避けることはできないことなのではないでしょうか。
生殖補助医療の精子や卵子の提供により生まれた一方の親と血縁のない子どもを半養子と表現をすることがあります。古くから行われていた血縁によらない親子関係としては里親と里子や養子縁組による養親と養子がよく知られています。ここでは養子や実親との交流のない里子に対して行われてきた「真実告知」の経過を辿ってみたいと思います。
「真実告知」は、児童福祉の実務家たちによると「お母さんからは生まれていないが、今は私たちが親であなたは大切な子どもであること」「心から望んで養育していること」など事実とともに真実の思いを含めて伝えることであるといわれています。それは一度だけでなく「非血縁家族において、子どもが産みの親の存在を理解できるように育ての親が行う継続的な試み」(古澤,2005)とも言われています。
日本において里子や養子への「真実告知」について行われた1960年代の調査(鈴木,1967)では、養親の多くが養子であることを話せない状態でした。いつかはわかることだから,いずれは話さなければならないと承知しているが、話す自信がつかずに自然察知にまかせようと考えている養親がたくさんいました。その後、日本でもイギリスで里親養育について学び「真実告知」について先駆的に指導してきた日本の民間の児童福祉機関が現れました。そこでそれまで取り扱った子どもと里親を対象に実施した調査(家庭養護促進協会,1984)によると、里親は子どもが小学校を卒業するまでに6割が中学校を卒業するまでに9割の人が告知していたという結果でした。ほとんどの里親が告知して良かったととらえており、後悔している数人は、子どもの問題行動を解決するためか、子どもが親子関係に疑問を持ったために里親が話をした人たちだったということでした。2016年の日本財団の調査では告知した人は74.5%となり、6歳までに告知をすると答えた人が95.5%でした。公的機関に先んじて民間の児童福祉機関では、早くから真実告知の重要性を認識し実施することを強く勧め告知する養親、里親が多くなってきました。
以上のように当時は子どもの「出自を知る権利」も保障されない社会の中で「真実告知」をする必要性が認められるまでには長い年月をかけて今に至っています。
(文責:森和子)