提供型生殖補助医療について

AIDをめぐる世界の現状

かつては、AIDで子どもをもった親は、AIDを利用したことを秘密にしていれば、周囲も生まれた子どもにも、親子間に血のつながりがないことは気づかれないと考えられてきました。しかし近年では様々な状況が変化しています。

遺伝子検査の普及

その変化の1点目は、遺伝子検査が普及し、遺伝子検査で親子の生物学的な関係がわかるようになってきたという点です。欧米では、商業的な遺伝子検査会社が登場し、1万円から2万円で血縁者を探すサービスを提供するところも出てきています。そうした遺伝子検査を利用して、海外では偶然に自分の親と血縁がないことを知ったり、自分の家族以外に、非常に血縁の近い人がいることを知る人が少なくありません。欧米では実際に自分がAIDで生まれたことを知らなかった人が、遺伝子検査をきっかけに自分の出生の経緯を知った人もいます。また、AIDで生まれた人が、同じ提供者から生まれた異母きょうだいを何人も見つけたという例も多数報告されています。かつてとは違って、親が隠していても、子どもが出生の経緯を知る可能性が高くなってきています。

出自を知る権利の保障

変化の2点目は、国際的に精子提供や卵子提供で生まれた人たちの出自を知る権利が、重要な人権と捉えられるようになってきていることです。1989年に国連は「子どもの権利に関する条約」(通称:子どもの権利条約)を採択し、1990年にこれを発行効しています。この「子どもの権利条約」の7条には、「できる限りその父母を知る権利を有する」とあり、日本もその条約に1994年に批准しています。そして、多くの国々で、1990年前後から、精子提供で生まれた人たちが希望すれば提供者の様々な情報を提供されるようにしてほしいと声を挙げるようになってきました。こうした訴えを受けて、出自を知る権利を法律で保障するところも出てきました。それでも、まだ多くの国で、配偶子提供で生まれた人たちで提供者を知ることができずにいる人が多く存在します。2019年6月には、子どもの権利条約の採択から30年の節目を記念して、国連主催の国際会議に世界の配偶子提供で生まれた人や代理出産で生まれた人16人が集まりました。そこでは、配偶子提供で生まれた人たちが、配偶子提供者の匿名性を廃止し、出生者が希望すれば提供者の情報を得られるようにするべきだと訴えました。

(文責:仙波由加里)

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