提供型生殖補助医療について

DNAマーカーリンク検査(1)

DNAマーカーリンク検査とは、ヒトの遺伝暗号、すなわちゲノムDNAの塩基配列の個人間の違いを利用し、その一致度を調べることで、血縁関係の有無を調べる検査です。DNAの塩基配列はアルファベットで表すとG、A、T、そしてCの4つの文字の並びで表すことができ、ヒトの遺伝暗号は30億個の塩基の並びで構成されています。ヒトとしては99.9%程度は共通した配列をしているのですが、ところどころに個人間で微妙な違いがあり、これがわたしたちの顔だちや体格、性格や才能、血液型やお酒に強い弱いなどの体質、そして、病気になりやすさなどを決めています。この配列の違いは、ヒトの生物として重要な「多様性」をつくるしくみを提供しています。

この遺伝暗号を、わたしたちは基本的には2本ずつ持っており、1本は父親から、もう1本は母親から受け継いでいます。すなわち、父親は精子、母親は卵子を通して2本のうち1本ずつを子へ伝え、子は受精卵の時点で再び2本の遺伝暗号を持つようになります。たった1つの受精卵が細胞分裂により2個になり、4個になり、8個になりを繰り返し、最終的にはわたしたちは約37兆個の細胞で構成されていますが、細胞分裂のたびにゲノムDNAは複製しては2つの細胞へ分配する、を繰り返しますので、身体中のすべての細胞は共通して父母から受け継いだ2本分の遺伝暗号を持っています。

遺伝暗号の違いはこのようにして親から子へ受け継がれますので、それと連動して、遺伝暗号によって決定される私たちの「個性」には、親譲りのものが多く見られます。一方、個人の個性は、ヒトの成長に伴い、環境因子の影響も加わって徐々に変化していきます。ただし、土台にある遺伝暗号自体は生涯変わりません。DNAマーカーリンク検査では、生まれ持った遺伝暗号の違いを調べる検査になります。DNAマーカーリンク検査で提供者を知るということは、ある意味、自分に生まれ持って受け継がれた個性の半分を知ることにつながるわけです。

DNAマーカーリンク検査は、脳などを含めた身体中のすべての細胞が共通して持っている遺伝暗号を、その代表として血液中のゲノムDNAで調べています。このような検査は採血が必要なので、以前は医療機関でしか実施できなかったのですが、近年は唾液の中に末梢血白血球が多く含まれていることがわかり、非侵襲的なゲノムDNA採取法として利用されるようになり、多くの民間の検査業者での遺伝学的検査が進み、わたしたちもこの方法を採用しました。次回のコラムでは、具体的な検査のしくみをお話しします。(文責 倉橋浩樹)

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