お知らせ

精子提供で生まれた方からのメッセージ(海道明さん)

これまで、会員限定でお送りしていたニューズレターでしか読めなかった精子提供で生まれた当事者のお話の一部を、こちらでも公開させていただきます。
当事者の皆さんの、もっと自分達の意見や考えを知ってほしいという想いからご了承いただきました。
(2025年7月19日に行われた、書籍『自分は何者かを知りたい 匿名の精子提供を生きる』(晃洋書房)出版記念イベントの際のご発言です)
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私もAIDの出生当事者で今回本にさせていただいているんですが、告知を受けたのが九歳の時で両親の離婚を機にだったのですが、多分私が知ってる限りでも一番早い年齢だったのかなと思います。その点で他の方とは結構考え方が異なってくるところもあるのかなと思います。これからお話しすることはあくまでも私個人の意見であって全部の出生者に当てはまることではないということを念頭においていただければと思います。

まず私自身のAIDに対するスタンスなんですが、これは明確に反対です。その前に出自を知る権利について先にお話しさせていただきたいんですけれど、私は実は出自を知る権利そのものにはそこまで積極的な願望はなくて、そこのあたりは少しちょっと考え方が違ってたりもするんですけども、逆にその出自を知る権利が満たされることと、告知が早いことさえ達成できれば問題がなくなるわけではないということを今回は強調しながらお話しできればなと思います。

というのも、その出自を権利の強調がその出自を知っていることが望ましいというように受け取られてしまうと、裏返ってその出自を知らないことが望ましくないというようなニュアンスにつながりかねないというのが一つ懸念点としてあって、例えばその出自が不明瞭であるとかが本人にとってのスティグマになりかねないとか、そういうリスクがあるのかなと考えています。

告知についてもなんですが、早めにした方がいいというのもあくまで傾向でしかないですし、その方がちょっと当事者の負担が少なくなるのも傾向でしかありませんし、告知してそれでこの話は終わりで済む問題でもなくて、その後の人生においても継続的なケアが必要であると考えています。私自身九歳の時告知を受けて、その時はそもそも物心がついているかあやしい年齢でもあるので、そういうものかぐらいに捉えてたんですけれど、だんだんやっぱり思春期になってきてその事象が気になってきたりして、アイデンティティのことを考え出したりする時にちょっとフラッシュバックではないと思うんですけれど、その重みが変わってきたりとかもあったので、一回告知すれば済む話でもないということを強調しておきたいと思います。

また、告知についてもう一つ、今AIDを利用しようと考えていらっしゃる方について、ちゃんと告知しようっていう意思を持って、この会に来て、この本をお手に取っていただいたりして、(AIDを)利用しようと考えている方は多分ちゃんと告知することの重要性を認識していただいているかと思うんですけれど、実際に子供が生まれてからその告知するという気持ちが揺らがないかっていうところは今一度考えていただきたいなと思っていて、ちょっと強い言葉を使うんですけども、生まれる前だったら何とでも言える、なんとでも言えます。そこには自覚的になっていただきたいというのと、あとは子どもに最終的に告知をして、その時に何を、その時だけじゃないですね、告知してからしばらく経った後でも、例えば、なんでそこまでしたのかとかそういうことを言われるかもしれないんですけど、何を言われても受け止める覚悟が本当にあるのかどうかというのはよく考えていただいてからこの制度を選択するか考えていただいてからにしてほしいなという望みがあります。

ここからは今回寄稿させていただいたタイトルにも入っているんですが、子どもを生むということそのものの重みについてお話ししたいと思います。私は今教育学の研究をしているんですけど、この進路を選んだのはそもそもこのことが無関係なのかと言われると、そんなことはないだろうと自分でも思うのですが、そういう教育に関心を持っている当事者という立場からお話しさせていただければと思います。

大前提なんですが、子ども自身は言うまでもなく、自分で生まれるか否かの選択をすることはできません。なので、自分が子どもを持ちたいから特定生殖補助医療を行うことだったり、少子化対策と言って出生数を増やそうとするというのは、結局は言ってしまえば大人のエゴでしかなくて。それで生まれた子どもたちの幸福を保証できなければ、本末転倒であるのかなと思います。ここで強調しておきたいのは、子どもは親の自己実現の手段でもないし、社会を維持するための資本でもないということで、親になる権利だったりとか、社会のインフラの都合だったりとか、そういうものより生まれてくる子どもの幸福が第一に考えられる機会を望んでいます。

こうして注目をいただいているからこそ、子どもを作るということそのものの重みっていうのが、今一度問い直されてもいいのかなと考えています。失礼いたしました。ありがとうございました。

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