精子提供で生まれた方からのメッセージ(鳰灯子さん)
当事者の皆さんの、もっと自分達の意見や考えを知ってほしいという想いからご了承いただきました。
(2025年7月19日に行われた、書籍『自分は何者かを知りたい 匿名の精子提供を生きる』(晃洋書房)出版記念イベントの際のご発言です)
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初めまして鳰灯子と申します。前作では「DNAに秘密あるらし神の留守」、そして今回は「偽りの個人情報鳥雲に」というタイトルで書かせていただきました。お手に取っていただければ内容はわかるので、今日は記してないことをお話しします。
私の未来はDOG発足時よりも着実に短くなっています。仮名を使用し、顔出しNGを継続していますが、私自身はもうどうでもよいことなのです。ただ、私自身を公開することで、育ててくれた父は精子に問題があったこと、そして私と血がつながっていないことが明かされてしまいます。AIDが私の人生のスタートを狂わせてしまったのです。何も知らずに結婚して子どもを持ったことで、普通ではないことに巻き込んでしまったのです。主人と子どもたちは多少知っていますが、親戚や友人に普通ではない私の出生の秘密が知られてしまいます。偏見を持たれることはあってもたやすく受け入れることはできないでしょう。なぜなら、真実を伝える機会も勇気もなく、何もなかったように普通のふりをしてきたからです。なので、世の中に対して正々堂々と私の地位を確立できるまで、悲しいですが隠れています。
お盆に父の実家に行った時のことです。家を出たいとこたちが、里帰りで賑やかに卓を囲んでいました。その配偶者に肺がんの疑いがあり、精密検査をして手術というときにそこの長男は言いました。うちはがんの家系ではないから妹は大丈夫だけれど、まあ頑張ってよ、と励ましていました。結果的にその方は亡くなりました。
父は輸血が原因でがんになりましたが、実は私もがんになりました。未だに私のがんのことは、父の実家には内緒です。でも、こうして家族の病歴が提供されることは安心材料であり、高血圧症や糖尿病は予防にもつながります。
今回出版に際して原稿を提出し、校了で執筆者は役割を負えるのですが、その後にも体調に異変がありました。友人の車の助手席で高速道路の案内が見にくいと思いました。老眼はそれなりに進行していますが、来年は免許の更新があるので眼鏡を作り直しても効果は出ず、まあ政府の言う通りに近所の眼科を受診しました。網膜静脈閉塞症と診断がついたのですが、私のお薬手帳を見て、あなたのような人は何が起こるかわからないから、今後は総合病院に行ってほしいと紹介状を出してもらうことになりました。車の免許の更新がどうのこうのかという次元ではないので、早急に受診しなさいと。せっかく検査をしたのにその場で治療ができなくて、皮肉にも医療費の無駄遣いをしてしまいました。目に注射をするという治療しか方法はないけれど、それは完全に治す治療ではなく、進行を遅らせたり、多少改善させたりする効果はあるけれど困難です。しかも面倒なことに両目なので同時に治療はできません。正直言って、今回はゲームオーバーだと思いました。天罰だと感じました。でも嬉しい誤算があり、治療で著効したのです。まだまだ余談は許しませんが、体調に関しては生殺し状態が続きます。生命とは聖域だと思っています。コロナ禍もあり世の中は一転しましたが、不妊治療を受けている人の声は大きいです。命とは尊いということを発信するべきだと思います。原点に戻りましょう。命について真剣に考えてみましょう。以上です。ありがとうございました。