真実告知
精子・卵子提供で生まれる子ども(一方の親とは血縁があるため半養子とも言われる)は年々増加し、出自を知る権利の保障とともに真実告知(テリ ング)の重要性が指摘されています。真実告知のあり方について実践を積み重ねてきた養子縁組家族のあり方から学ぶことができます。養親子関係は「血の繋がりがないが故にしっかりとした親子関係を構築することでしか成立しないものであるから,養子に対して『血の繋がっている親子のように見せかけること』によって親子関係を安定させようと考えることが,最も子どもを欺くことになる」(岩崎, 2001)と言います。そこで養子縁組親子の場合、養親から子どもに対し,生みの親ではなく育ての親である事実を告げることが必要となるのです。民間の養子縁組斡旋機関では6~9割の親子の間で真実告知が行われています(家庭養護促進協会,2017,岡山ベビー協会,2011)。
一方、1948年以来精子提供(AID)実施施設の医療従事者はAIDを選択した人に対して出生の事実については秘密にするようにと長い年月の間伝えられてきました。2007年の意識調査では約8割の男女がAIDで出生した事実を告げる予定はなく、夫婦だけの秘密にしたいと考えていました(清水・日下・長沖,2007)。しかし、真実を告げられずに成長した人たちの苦悩が次第に明らかになってきました。
養子の研究から真実告知を行うことは成育史における連続性の感覚を養うことになって、青年のアイデンティティ形成過程の原動力になる(Kroger, 2005)と言われています。できれば乳幼児の頃より出生にまつわる真実について折に触れて日常のなかで繰り返し親自身が話すことによって、オープンな姿勢が子どもに伝わります。
精子・卵子提供で生まれた人への真実告知は「生まれた人が提供者の存在を理解できるように親が行う継続的な試み」と説明できるのではないかと思います。養子になった人も精子・卵子提供で生まれた人にとっても大事なのは自分が、“この親に愛されていること”、“ここに私の確たる居場所があること”、“この関係が永遠に続くことが保障されていること”(岩崎,2006)なのです。精子・卵子提供で生まれた人の家族をテーマにした絵本も出版されていています(「ゆみちゃんのものがたり」才村眞理,「わたしのものがたりMy Story」すまいる親の会等)。子どもを育てるなかでこのような絵本を活用しながら小さな頃から少しずつ何度も真実が語られ、親子関係に組み込まれることによって安定した親子になると考えられます。
(文責:森和子)